完全失踪日記

Escape from another.

2019-01-01から1年間の記事一覧

貧困と貧乏の境界。 貧しさとは戦わない話

子供の頃、私の家に電話がなかった。 父は、なまけもので腕の悪い職人だった。 あまり働かないので収入も悪い。働かず、パチンコばかりしていた。 自ずと、家庭は貧しい。 貧乏と貧困の境界線はあるのか? あるとすれば、それは何か? 例えば、健康で文化的…

正月は通過点ですらない。それでも新年はやってくる話。

正月の準備をした。 100均で買った餅、甘酒。 以上だ。 これは今年に限ったことではない。 毎年、この程度だ。 正月ぐらい贅沢を、とか、全くない。 働いていた時は、「今年もよく耐えたな」と自分に感謝したが、 今年は、それもない。 淡々と過ぎるのを待つ…

冬を休む。 常夏のマレーシア旅を計画する話

寒い。 冬を休もう。 延期していたマレーシア旅を予約する。 春節(1月25日)前後は避けた方が無難だろう。 ホテルも飛行機も高くなる。 中国人が大挙してやってくる。 1月中旬の10日間としよう。 熱帯のメトロポリタンでだらだら過ごそう。 何も決めない。

死ぬのはいいが・・・。 共済の医療保険に加入した話

医療保険に加入した。 在職中に加入していた保険が10月に失効。 無保険状態だった。 新規加入に当たり考慮したこと。 ①掛け金、2000円/月程度 ②病気・事故の補償重視 ③死亡保険は不要 ⇧これらは、働いていた時と同じ考え方。 国民共済、コープ共済、都道府県…

思い出少ないイブを思う。 私のクリスマスの話。

子供の頃、クリスマスプレゼントをもらった思い出はない。 いや、幼稚園でもらったことは憶えている。 サンタがいる、と信じたことはない。 だから、サンタにお願いすることはなかった。 「サンタを信じていた」、という人の話を聞くと、 「嘘だろう」と、心…

何だか解らないが気持ちの悪いもの。岡本太郎美術館での話

これは岡本太郎の作品ではない。 それは、見ればわかる。 奇異な像が二つあった。 別の作家の作品である。 一体目。⇧ 見るほどに薄気味悪い。いびつ、である。 部分部分を見れば人間だが、全体では、人間の様で人間ではないからだ。 感じる違和感が恐れに達…

今さら、人・神・自然 ? 東京国立博物館での話

数千年も受継がれし造形物は、どれも似ている。 対象が、人自身、神を模したもの、自然を写したもの、であっても。 時を超えるうる共通の理由がある。 人・神・自然の三分には違和感を感じた。 三者の境界は不明瞭だ。 今や、 人=Big data 神=Google 自然…

無制限に脱力する系。 ワワフラミンゴ「くも行き」を観た話

超脱力系劇団・ワワフラミンゴの「くも行き」を観た。 どこまでもゆるい役者の所作。 台詞で構成された演劇だが、脈絡はない。 会話に意味はない、遊びですらない。 始まりも、終わりも、明確な何かも、ない。 そして、わざとらしさや嘘がない。 どこまでが…

それは、生きていないような心地。 ストレス極小世界での話

寒いとよく眠れる。 そして、寝たいだけ寝ている。 二度寝の幸福は、仕事を辞めても変わらない。 今は、三度寝も当たり前。 目覚めても、布団からなかなか出ない。 出る必要もない。 これが、一つの究極の幸せに違いない、と思う。 今、生涯で最もストレスの…

「秒速5センチメートル」の聖地を訪ねる。 岩舟駅での話

新海誠「秒速5センチメートル」の聖地に出かけた。 岩舟駅である。 今では無人駅となっていた。 時間は流れている。 この映画を観るたび、置き去りにしてきた事々を思いだす。 だから、何度も見てしまう。 そして、何度も思い起こす。 忘れてしまえば、それ…

今日、私の老後は始まる。個人年金の受給を開始した話。

今日から個人年金の受給が始まった。 つまりは、老後となったわけだ。 私は今54歳だ。 公的年金受給開始まで11年。 長生きする自信がないので、少し前倒しで受給するつもりだ。 いや、違う。 長生きしたくもないので、額は下がっても早めに受給開始する。 今…

昭和は遠くなりにけり。映画「HUMAN LOST人間失格」を観た話

昭和111年。 今から17年後、終わらない昭和の物語。 人が、健康長寿と引換えに、尊厳を失った社会。 人間が家畜として生き長らえることの是非を問う。 「人間は恋と革命のために生まれてきたのだ。」 太宰治「斜陽」での一文。 確かに、恋と革命の物語、であ…

言語表現を超えるための一つの試み。カミーユ・アンロ「蛇を踏む」での話

現代美術は多様だ。 作品を前にし、その意味を考えることは無意味だ。 感じるしかない。 この作品は、ニーチェ「道徳の系譜」をイメージして創られている。 テクストを生け花(イメージ)に変換しているのだ。 言語表現の限界を超える一つの試みだろう。 人…

過去が崩壊していく。記憶をめぐる旅の話

記憶をめぐる旅をした。 此処は、伊豆半島の温泉リゾート。 25年前に泊まったホテルの現在の姿。 廃墟である。 我が目を疑うが、すぐに受け止める。 間違いない、と。 人の造りし物は壊れ、人の記憶は薄れゆく。 どちらも、跡形もなく消えていく。 消えゆく…

将軍の孤独を味わう。 東京湾で屋形船に乗った話

夕方、屋形船に乗った。 東京湾40分クルーズ。 竹芝付近から出帆し、晴美ふ頭、オリンピック選手村、レインボーブリッジ、お台場を経由した。 将軍コース。1120円。 乗船する時、係員に言われた。 「お一人だけですよ」と。 そう、客は私一人だった。 色々な…

神との対話は大変だ。大嘗祭の宮を観た話

此処は、何もない広場だった。 家康も、想像しえない景色だろう。 建物は質素である。 おそらく、儀式にこのシンメトリー構造物が必要なのだろう。 神との対話は、難儀だ。 映画「未知との遭遇」を思い出す。 哲学者ロラン・バルトが、皇居をこう言出した。 …

これは、ゆるやかなる自殺かもしれない話

健康診断は好きではない。 会社に属していると、年に一度の健康診断は必須だ。 嫌々、受診していた。 今年は、当然?受診していない。 市役所から案内の封書が来ていたが、封もあけず捨てた。 大きな持病はないが、自身の健康に自信はない。 長生きするには…

隠居生活者は入場できますか? ジブリ美術館での話

独りで入場の列に並ぶのが気恥ずかしい。 前門の女子高生、後門の親子連れ。 皆は楽し気、私は所在無い。 園内は、子供と外国人とで大賑わい。 人を掻き分け一周し、30分程度で退却す。 既に、居場所のない場所があるのだ。 鋼鉄のロボット兵のように、静か…

秋は、夕暮れの憂鬱。仕事を辞めて季節の好みが変わった話

好きな季節は、秋。 生き物が、ゆっくりと死を準備する季節。 その、なだらかな坂道を下るような速度が、合っていた。 嫌いな季節は、春。 世界が新生し、生命が満ちてくる季節。 他者は再生するが、私は再生することはない。 この決定的な相違に抗う術はな…

我々はエントロピーに向かう。 洗濯機が壊れた話

洗濯機が壊れた。 買って10年だった。 その間、2回引越した。 機械は急に壊れない。 前兆がある。 今回は、1年くらい前から不具合があった。 脱水時の異音、とか。 そして、本当の終わりは、突然だ。 水が溜まらなくなった。 電気系統がやられたのだろう。…

純粋な毒は美である。「齋藤芽生とフローラの神殿」での話

毒、毒、毒、どれも、毒そのもの。 生き物の秘める毒が滲み出るのが見える。 しかし、不快ではない。 美しい。 純粋な毒は結晶化し、華と成る。

宇宙物理学者=SF小説家。「ユニバース2.0」を読んだ話

宇宙物理学者の仕事は、想像と検証作業である。 本質的には、SF作家と同じだ。 宇宙とは何なのか?宇宙を支配する法則はあるのか? 全ては、想像することから始まる。 想像が像を結ばなければ、次に進めない。 想像した姿が、相対性理論、量子論、天体観測結…

表現は説明ではない。ダムタイプ/ACTION+REFLECTINOS での話

1990年代後半、ダムタイプは現れた。 表現が全く斬新で、圧倒された。 抽象的な表現は、意味は分からなくとも、秘める情報の重厚さは届いた。 「よく理解できないが、何かすごいと」と感じたのは、YMO以来であった。 20年が経ち、凄さの理由に少しだけ触れる…

オランウータンの留学生。秋の動物園での話

動物園では、類人猿に注目する。 人の世の縮図が見れる。 彼女は、インドネシアからの留学生。 人間に育てられた。 だから、オランウータンの社会を学ぶためにやってきた。 と、説明にあった。 実際の彼女は、今も頭陀袋を被ったままだ。 独りで、他のオラン…

「私」は存在するのか? マルクス・ガブリエル「「私」は脳ではない」を読んだ話

脳神経科学は、意識を物質に完全還元できると想定する。 つまり、意識は脳内の物理化学反応である、と考えている。 ガブリエルは、この考えを神経中心主義とし、本書で激しく非難する。 人間の尊厳を著しく侵害する思想だと。 ガブリエルは、人間の自由意志…

古市憲寿は芥川賞作家になるのか?「奈落」を読んでみた話

古市憲寿の小説を読むのは3作目だ。 どれも、文体が異なる。 器用なのだろう。 どれも、孤独を書いている。 不器用なのだろう。 この世界は、この人の世は、こんなもんだろう。 と、飽き飽きしているだろう。 辛そうだ。

彼が見る世界が見えない。「バスキア展」での話

バスキアは27歳で死んだ。 薬物中毒だった。 彼が描くものは、尖っている。 笑わない。 子供は泣いている。 世界が美しいとは思っていない。 世界は悪意に満ちている。 自分も醜い。 全部が哀しい絵だ。

D計画とは何か?「小松左京展」での話

小松左京は、破壊神である。 「日本沈没」で日本列島を破壊。 「さよならジュピター」で木星を破壊。 D計画の「D」は、Disaster(災害)のDである。 そして、創造主である。 遺作で未完の「虚無回廊」では「人工実存」を創造した。 「人工実存」とは意識を持…

旅行は終わり、旅に戻る。「宮本むなし」で〆る話

「宮本むなし」は定食屋である。 大阪・奈良・京都。 兵どもの夢の跡を転々と、最後は「むなし」で〆ることにする。 食べたのは、かつ丼。 旅行を終える。 終わっても、帰る場所も、帰る日常も、無いことに気づく。 かつ丼はうまい。 むなしくはない。 「私…

人体模型の怨。島津記念館で思い出した話

京都に島津製作所の本社がある。 神社仏閣より先に、島津記念館へ出かけた。 島津製作所が製作した歴代の分析機器が展示されている。 島津製作所機器のデザインは独特で、一目で、それとすぐに分かる。 今回、武骨なフォルムのルーツを見ることができた。 分…