完全失踪日記

Escape from another.

好み

秋は、夕暮れの憂鬱。仕事を辞めて季節の好みが変わった話

好きな季節は、秋。 生き物が、ゆっくりと死を準備する季節。 その、なだらかな坂道を下るような速度が、合っていた。 嫌いな季節は、春。 世界が新生し、生命が満ちてくる季節。 他者は再生するが、私は再生することはない。 この決定的な相違に抗う術はな…

象の残像。象がいなくなった動物園の話。

この動物園には、お気に入りの場所がある。 そこは、象がいなくなった象舎。 象は3年程前に死んだ。 象舎は象が不在のまま放置されている。 象舎の一角には、象の写真、象への感謝の言葉と品々が置かれる。 象舎の前を通る人の多くは、その場所へ行く。 象…

もはや呪い。ゲーム「ソリティア」が止められない話

「ソリティア」が止められない。 一番クラシカルなゲームで、クロンダイクと呼ばれてるものだ。 そもそも、Windowsに付録としてついてたのだ。 仕事中、手持ち無沙汰になると、ついプレイしていた。 それが習慣となり、朝一番の運試しでやっていた。 一番の…

映画館では一番前の席を選ぶことにしている話

映画館によく行く。 ほとんどの映画館は座席指定なので、あらかじめ席を選択する必要がある。 先着順で好きなとことに座る方が味があってよかったんだが、仕方がない。 最近は、好んで一番前の席を選ぶことにしている。 中央付近の席は避け、右寄りか左寄り…

命日でもないのに三島由紀夫の墓参りに行った話

三島由紀夫(本名:平岡公威)は、1970年(昭和45年)11月25日、 陸上自衛隊 市ヶ谷駐屯地(現防衛省)で、自衛隊の決起を促す演説をした直後に割腹自決した。 45歳だった。生きていれば、94歳である。 墓には新しい花が多数、訪れる人が絶えないのだろう。 …

市民プールは塩素が効きすぎていた話

夏日となる予報だったので、昼間の市民プールへ出かけることにした。 泳ぐのは好きだが、思い出してみると、プールで泳ぐのは十数年ぶりだった。 10年ほど前に、海の近くに住んでいたことがあって、その時は、よくシュノーケリングに出かけていた。 今日は、…

平日の昼間から温水プールで泳ごうとする話

村上春樹小説の主人公はよくプールにいく。 他者との関係は疲れるだけで、「市民プールでひと泳ぎししたあと、ひとり気に入った音楽を聴きながらビールを飲む」生活を至福だと感じている。 主人公は20代後半から30前半の男なので、若くして達観しているわけ…

天気がいいので久しぶりに動物園に出かけた話

動物園に行った。25年ぶりだ。 私は、結婚もしていないし、子供もいないので行く機会が少なかった。 仕事を辞め、檻から解放された気分が動物園に足を向けさせたのかもしれない。 檻の中で一生を過ごす、動物たちは幸福なのだろうか? 猫の寿命は、のら猫は…

改めて桜の花をみた話

陽気がいいので、近所の公園にいった。 桜は満開で、花見客もちらほら。春休み中なので子供らでにぎやかだ。 花をよく見ると、思っていたよりも大きいことに気づいた。桜は、落ちた花でしか見てなかったと気づき、愕然とした。 私は桜が嫌いだ。いや、桜咲く…