完全失踪日記

Escape from another.

2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

これは、ゆるやかなる自殺かもしれない話

健康診断は好きではない。 会社に属していると、年に一度の健康診断は必須だ。 嫌々、受診していた。 今年は、当然?受診していない。 市役所から案内の封書が来ていたが、封もあけず捨てた。 大きな持病はないが、自身の健康に自信はない。 長生きするには…

隠居生活者は入場できますか? ジブリ美術館での話

独りで入場の列に並ぶのが気恥ずかしい。 前門の女子高生、後門の親子連れ。 皆は楽し気、私は所在無い。 園内は、子供と外国人とで大賑わい。 人を掻き分け一周し、30分程度で退却す。 既に、居場所のない場所があるのだ。 鋼鉄のロボット兵のように、静か…

秋は、夕暮れの憂鬱。仕事を辞めて季節の好みが変わった話

好きな季節は、秋。 生き物が、ゆっくりと死を準備する季節。 その、なだらかな坂道を下るような速度が、合っていた。 嫌いな季節は、春。 世界が新生し、生命が満ちてくる季節。 他者は再生するが、私は再生することはない。 この決定的な相違に抗う術はな…

我々はエントロピーに向かう。 洗濯機が壊れた話

洗濯機が壊れた。 買って10年だった。 その間、2回引越した。 機械は急に壊れない。 前兆がある。 今回は、1年くらい前から不具合があった。 脱水時の異音、とか。 そして、本当の終わりは、突然だ。 水が溜まらなくなった。 電気系統がやられたのだろう。…

純粋な毒は美である。「齋藤芽生とフローラの神殿」での話

毒、毒、毒、どれも、毒そのもの。 生き物の秘める毒が滲み出るのが見える。 しかし、不快ではない。 美しい。 純粋な毒は結晶化し、華と成る。

宇宙物理学者=SF小説家。「ユニバース2.0」を読んだ話

宇宙物理学者の仕事は、想像と検証作業である。 本質的には、SF作家と同じだ。 宇宙とは何なのか?宇宙を支配する法則はあるのか? 全ては、想像することから始まる。 想像が像を結ばなければ、次に進めない。 想像した姿が、相対性理論、量子論、天体観測結…

表現は説明ではない。ダムタイプ/ACTION+REFLECTINOS での話

1990年代後半、ダムタイプは現れた。 表現が全く斬新で、圧倒された。 抽象的な表現は、意味は分からなくとも、秘める情報の重厚さは届いた。 「よく理解できないが、何かすごいと」と感じたのは、YMO以来であった。 20年が経ち、凄さの理由に少しだけ触れる…

オランウータンの留学生。秋の動物園での話

動物園では、類人猿に注目する。 人の世の縮図が見れる。 彼女は、インドネシアからの留学生。 人間に育てられた。 だから、オランウータンの社会を学ぶためにやってきた。 と、説明にあった。 実際の彼女は、今も頭陀袋を被ったままだ。 独りで、他のオラン…

「私」は存在するのか? マルクス・ガブリエル「「私」は脳ではない」を読んだ話

脳神経科学は、意識を物質に完全還元できると想定する。 つまり、意識は脳内の物理化学反応である、と考えている。 ガブリエルは、この考えを神経中心主義とし、本書で激しく非難する。 人間の尊厳を著しく侵害する思想だと。 ガブリエルは、人間の自由意志…

古市憲寿は芥川賞作家になるのか?「奈落」を読んでみた話

古市憲寿の小説を読むのは3作目だ。 どれも、文体が異なる。 器用なのだろう。 どれも、孤独を書いている。 不器用なのだろう。 この世界は、この人の世は、こんなもんだろう。 と、飽き飽きしているだろう。 辛そうだ。

彼が見る世界が見えない。「バスキア展」での話

バスキアは27歳で死んだ。 薬物中毒だった。 彼が描くものは、尖っている。 笑わない。 子供は泣いている。 世界が美しいとは思っていない。 世界は悪意に満ちている。 自分も醜い。 全部が哀しい絵だ。

D計画とは何か?「小松左京展」での話

小松左京は、破壊神である。 「日本沈没」で日本列島を破壊。 「さよならジュピター」で木星を破壊。 D計画の「D」は、Disaster(災害)のDである。 そして、創造主である。 遺作で未完の「虚無回廊」では「人工実存」を創造した。 「人工実存」とは意識を持…

旅行は終わり、旅に戻る。「宮本むなし」で〆る話

「宮本むなし」は定食屋である。 大阪・奈良・京都。 兵どもの夢の跡を転々と、最後は「むなし」で〆ることにする。 食べたのは、かつ丼。 旅行を終える。 終わっても、帰る場所も、帰る日常も、無いことに気づく。 かつ丼はうまい。 むなしくはない。 「私…

人体模型の怨。島津記念館で思い出した話

京都に島津製作所の本社がある。 神社仏閣より先に、島津記念館へ出かけた。 島津製作所が製作した歴代の分析機器が展示されている。 島津製作所機器のデザインは独特で、一目で、それとすぐに分かる。 今回、武骨なフォルムのルーツを見ることができた。 分…

宝とは何か? 正倉院展で思う話

奈良国立博物館で「正倉院展」を観た。 平日なので混んでいないが、外国人が目立つ。 此処では、鹿よりも外国人が多い。 光るものを美しい感じる。 人間の感覚は純粋で単純だ。 光るのは、光の反射である。 反射的に美しいと感じるだけだ。 金色を反射する黄…

太陽の塔。4つの顔の話

太陽の塔へ。 異様で素敵な、不思議な像である。 その存在に圧倒される。 解体しなかったのは英断だ。 2年前、内部をリニューアルし、公開している。 太陽の塔の魅力は、その内部にこそある。 内部を貫く生命の樹。 生命の進化と人類への賛歌。 岡本太郎が、…

此処は世界の境界。旅の宿の話

旅は此処から始まる。 大阪・西成の三畳一間。一泊2,000円 バス・トイレなし、テレビ、冷蔵庫、エアコンあり。 所謂、ドヤ街の宿である。 ドヤ街の一泊2,000円は、下の上、である。 ここ西成は、世界の境界。 見上げれば、アベノハルカス。 正面を見れば、バ…