貧困と貧乏の境界。 貧しさとは戦わない話
子供の頃、私の家に電話がなかった。
父は、なまけもので腕の悪い職人だった。
あまり働かないので収入も悪い。働かず、パチンコばかりしていた。
自ずと、家庭は貧しい。
貧乏と貧困の境界線はあるのか?
あるとすれば、それは何か?
例えば、健康で文化的な生活、だとすれば、貧困だったろう。
いや、ひもじかった記憶はないので、多分貧困とは違うだろう。
不条理な暴力はなかったが、愛情もなかった。
家族の会話らしい会話はない。
悩みを家族に相談したことなど皆無だ。
テレビドラマの団欒のシーンを見ても、現実味を全く感じない。
「これはドラマで、現実を美化している」と今も思う。
高校卒業と同時に家を出た。
独りが寂しいと思わなかった。
今も、独りでいられることが心地いい。
他者の顔色を窺う必要もない。
他者に期待することも、裏切られることもない。
身に染みて、自覚している。
貧しく生まれた者は、貧しく生き、貧しく死ぬのだ。