あえて事故物件に住んでいる話(その6)
不動産店に戻り、仮契約をしました。
保証人は必要なく、代わりに保証会社に保証金を支払うことで代用できたました。さらに、2年以上住むと、1か月の賃料が無料となるサービスがついていました。
そこまで終えたところで、約1時間半でした。
急ぎ、徒歩5分の家に戻って、その日のうちに郷里の実家へと帰ったのです。
叔父の葬儀を終え、東京に戻ると、不動産店から連絡がありました。
本契約をするので店に来てほしいと。
店に行くと、担当者が申し訳なさそうに、言います。
「実は、契約は別の不動産店でしてほしい」
「この物件は、委託されて紹介している。本当はここで契約できるはずだが、どうしても賃借人とお会いして契約したいと、言っていると」
「なので、少し遠くになるが(電車で20分程度)、別の店舗でお願いしたい」
なんか変だな、と思いました。
しかし、この時すでに、今の家から出ていく旨を連絡していたので、後戻りはできません。
大した物件でもないのに、借主の顔が見たいとは、どういうことだろう?
いい年して独身だからか?
んー、・・・・・・判らない。
今になって思うと、「事故物件を選んで住む人」とはどんな人間が確認したかったんではないかと、思います。
まあ、こちらはこの段階では事故物件とわかっていないので、想像もできないのですが。
数日後、もんもんとしながらその店舗に行くと、そこはチェーンの不動産店ではなく、個人の不動産店でした。
聞かれることはないでしょうが、自分の立場は「離婚して養育費が必要なので、安い所にしか住めない」という設定、にしました。
そういう状況を演じようと、
不動産店には、60過ぎのおばさんとその娘40歳くらいの二人が待っていました。街の不動産屋さんです。
物件を所有する大家さんとは親しく、いろいろと任されているようでした。
契約書を書きながら、世間話をするわけですが、
本当に聞きたい、話の核心である「どうして事故物件なんかに住むのか」とは、聞いてくることはありません。
当然です。
聞いたら終了だから、聞けるはずもありません。
が、私が普通の範疇に入る人だと判断したようで、「いい人が借りてくれてよかった」と何度も繰り返します。
私の方はといえば、やっぱりなんか違和感がありましたが、契約もしたし、まいいか、と思いました。
借りたのが事故物件とわかるのはまだ先の話となります。
(その7)に続く