今死んだら遺影は運転免許写真になるのだろうか。(失踪51日目)
私は私の写真がほとんどない。
小さい頃の写真は皆無だ。
カメラがなかったから写真もないのである。
小学生の写真は少しある。学校で撮ったもののようだ。
中学、高校、大学のは見当たらない。
就職してからも皆無である。
誰も私を撮らないし、私は私を撮らない。
写真は存在証明である。
私はこの世界にほぼ存在していないのだ。
線ではなく、点でしか存在していない私。
ぽつ、ぽつ、ぽーつ、という点だ。
点は存在しない。
存在しない点は色もない。
そういえば、最近写真を撮った。
運転免許の更新に使うために、インスタント写真を撮った。
久しぶりに写真の自分を見ると、ずいぶん年老いていた。
ああ、今死んだら遺影はこれになるのだろうな。
色のない点がひとつ、染みのように浮かんだ。