狂気の沙汰。精神病院で死ぬということ。(失踪21日目)
母は、いわゆる精神病院に入院している。
当初は短期間の入院を想定していたが、7年が経過した。
狂気と正気の境界は不明瞭である。
狂気も正気も定義することは不可能だ。
狂気とは正気でない状態で、正気とは狂気でない状態である、と言えるにすぎない。
病院へ面会に行くと、入院患者が目に入る。
一定のエリア内では比較的自由に行動している。
保育園を見てると思えばいい。
不思議そうにこちらを見やる者、何かを叫ぶも者、走り回る者、じっと空を見つめる者。
多くの患者と会話は成立しそうもない。
この中で、7年間も生活できるのだから、母はまともではないのだろう。
最後に母に会ったのは3年前である。
私のことを私と理解できる。
記憶もはっきりしてる。
会話も成立する。
だが、異様なのは目だ。
爛々と輝き、殆ど瞬きをしない。
体は衰弱しているのに、眼光だけは衰えていない。
笑いもしない。
退院の見込みはない。
退院させるつもりもないようだ。
親族が精神病院にいる意味がわかるだろうか?
親族一同が狂人扱いとなる。
さらに、差別の根が増える。
私はいい。
遠く離れて生活しているから、影響はない。
だが、母を精神病院に押し込んだ人達、というレッテルは貼られる。
母は、精神病院で死ぬことになるだろう。
なぜか?
入院費が格安なのだ。結局、貧しいからである。
なりふりより金なのだ。
私はこれを「狂気の沙汰」と呼ぶ。