冷たい雨。 無職という貴族の話
冷たい朝が嫌いだった。
雨の朝が嫌いだった。
冷たい雨の朝は最悪だ。
仕事に行くため、いつもの三倍のエネルギーが必要だ。
職場に辿り着くだけで、疲れ果てていた。
お金のために働くのは、不幸だ。
理由なく働くのは、不運だ。
私は、不幸でも不運でもない。
冷たい雨の日に、寝たいだけ寝る。
そして、だらだらと一日を過ごす。
焦燥も落胆も期待もなく、だらりだらりと、だ。
冷たい雨の日に、辛かった日々を思い起こす。
これも、幸せの一つに違いない。